ぽろんの女
氷雨の降る日にぽろんの女の店に入りました。
解決の糸口
2017/08/18 - Fri - 06:04
 出社命令が下りた。誰も今回のことは話したがらない。どこかびくびくしているところがある。彼らのうち何人が不正に気付いているのだろうか。私の部下のパワハラを訴えた女性が退職している。さすがに次長も新しい仕事を言いつけない。それで金庫の中で気になっていた睡眠口座の復活の事例を調べた。
 すでに1年前に睡眠口座として解約処理されたものだ。金額は2千万余り、個人名義で架空口座臭い。本人が来ず社長と名乗る人間が来たので一度は断ったようだが、後日運転免許を持った社員と社長が来た。処理は経理主任がしている。支払いは仮払い処理している。その後すぐに仮払いは消されている。消された日付の2千万の支払いのあった伝票を2時間かけて発見をした。
 今日は珍しく1階の古本屋のシャッターが上がっていて光が漏れている。
「ママは?」
「古本を売りさばいたようだよ」
 文庫本に目を落としたまま定位置の国語の先生が答える。ほとんど同時にマスクに軍手をしたぽろんが上がってくる。
「いつまでも形見だと言ってれないものね。謹慎は解けたの?シチューがあるけど食べる?」
「最近いろいろ作るようになったな?」
「ほれ料理の本を下から持って上がって積んである」
 先生が笑う。どうやらベトナムへ進んでいるようだ。続けて小声で囁く。
「3か月ぶりの昨日は赤タオルだよ」
「ところで東京には彼女がいるの?」
「ああ、いたが別れた。銀行を辞めると言ったら疎遠になった。彼女は平凡なサラリーマン生活に憧れたいるのさ」
「未練はない?」
「彼女とは泥酔状態の出会いだから」









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面接
2017/08/17 - Thu - 06:24
 謹慎は続いている。その間に転職会社の大阪面接があった。若い会社で同年代の人事課長と面談をした。凄くフレンドリーな面接で、大阪でパスしたら東京の本社での役員面接ですと言っていた。私は今の検査ではなくファイナンスの営業を希望した。
 謹慎中はノートパソコンを鞄に入れて持ち歩いている。喫茶店に入ってコーヒを飲みながら2時間今までの調査結果を整理している。そこに検査部長からのメールが入ってきた。
「あのビデオで人事部はパワハラなしと判断した。それとあの5人のうち支店長は当時の次長で経理主任は経理を担当してた。頭取の部下だった。次長も代理も当時の営業担当だった。いわば腹心中の腹心だ。常務取締役支店長は派閥の座長を務めている。だが頭取の基盤は必ずしも安定していない」
とコメントが入っていた。
 今日は石田からいつもの来いよメールが入った。
 ドアを押すと石田が黒縁眼鏡をかけた女性と座っている。
「覚えてないか?」
「いや」
 ママは今日も今朝まで続いた激しい行為を忘れたような顔で見ている。
「クラスの委員長だった?」
「この町で司法書士をしています。同窓会をしてるのだけど参加してくれません?」
「あの頃の不良仲間は誰も参加してないんだ」
「それほど思い出もないしね」
 そう言えばホームルームでリエとの淫らな行為を彼女に詰められた。私の顔を見てぽろんがにやりと笑った。






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閉店
2017/08/16 - Wed - 06:16
 部屋中を掃除して大ごみを出す。昼から京橋に出て賃貸物件の契約を済ませる。田町の海鮮居酒屋の上の少し古いワンルームに決めた。朝刊と週刊誌を買って遅めの昼食の寿司屋に持ち込んで見る。新聞では単独犯として検察に送られるとあり、睡眠口座の調査が今後の課題と書かれている。
 興味本位の週刊誌はそれでは済まさない。もうシリーズが始まっていて彼女が入行して現在の至る経緯を書いている。当時経理担当者だった頃の今では想像できない彼女の写真が載っている。その後黒縁眼鏡をかけるようになった。その頃が頭取が支店長として赴任していた時期だ。その頃の同僚だった主婦が証言している。
「私は女の勘で支店長と不倫していたと思いました」
と用務員の話を裏付けるような話をしている。その頃支店長は取締役に昇進し、彼女はマンションを買って経理主任になっている。支店長は5年の長期を務め本店の常務取締役業務部長に栄転している。これは私の調査でしっかり覚えている。
 なぜ経理主任は罪を一人で背負ったのか。証言があるが使い込みの行方が不明と書かれている。銀行ってこんなにもチェック機能が甘いのか。そんなことはないと呟いて京阪電車に乗り込む。ホームからぽろんのビルの背中が見える。2日前の獣のようなセックスを思い出す。ぽろんはそれをビデオに収めながらプレイをしていた。さすがにしばらくは抱けそうにない。
 駅を降りると取り壊しの資材が運び込まれている。エレベータも止まっていて、
「長らくお世話になりました。本日をもって閉店としました。カーネーション」
 この時初めてぽろんの店がカーネーションと言うことを知った。
 非常階段を上がって3階にはいる。廊下に看板もなくなっている。さらに5階のベットルームの前に立つ。ガラス窓をそっと押してみるとそこにはやはり鍵があった。いつもそうして彼女は開けていたのだ。すでにベトナムへ立ったのか。
 床の真ん中に旅行鞄だけがある。私は鞄からボールペンを出してメモを書く。
「ベトナムへ行く前に会いたい」






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空洞
2017/08/15 - Tue - 06:24
 3日後次長から呼び出しを受けて、支店長室に来るように告げられた。自己都合で辞めた元従業員と連絡がついて、経理の担当は今の支店長の不倫相手だと知らされた。やはり不正に係っているのは私の目を付けた5人だろう。だが頭取との繋がりが分からない。それについては検査部長にそれぞれの経歴を調べてもらうように頼んでいるが回答はない。
「異議申し立ては?」
「ビデオテープです」
「了解しました。私は1時検査部調査役でもあったのですよ。今年3月末で定年退職です。最後の仕事になりますね」
 話はそれだけで後は被害者と次長と経理主任の入念な面接をして最終便で帰って行った。私はその間支店長室で軟禁された格好だ。
 11時半やはりぽろんのドアを押した。恋してると言うのではなく寂しい者同士の温かみがあるのだろう。リエとはこすり合えば安心できた。その後何人かと付き合ったが肉体的な興味はどんどん薄れて行った。ぽろんとはお互いの空洞に何かを埋める作業をしているようだ。
「どう?」
 ぽろんもパワハラを気にしてくれていたようだ。きょうも小瓶とポールウインナーだ。
「何とかなりそうだ」
「乾杯ね」
 今日は赤いカーネンションなしの赤いタオルが投げ込まれた。もうクローズのカードが掛けられ鍵のかかる音がする。
「3本は空けてから部屋に行こう。あなたは久しぶりに肌が合うわ」





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パワハラ
2017/08/14 - Mon - 06:46
 予期すべく事件は起こった。8時過ぎに金庫の中での作業を終了した時、上半身裸の経理担当の女の子が背中から抱きついてきて金切り声で叫んだ。待ってましたと言うように次長と経理主任が駆けつけた。それで彼女の供述のみ本店人事部に報告された。と言うことで支店長から自宅謹慎を申し渡された。
 これについても検査部長に報告のメールを入れた。検査部長からメールが返ってきて、人事部の調査役がそちらに行くことになったので事前に今回の調査を話したので事実を伝えるようにと言うことだった。頭取の派閥がどれほどの大きさなのか分からない。
 初めて開店時間の5時にドアを押した。
「風邪ひき?」
「パワハラで自宅謹慎だ」
「そんなわけないでしょ?」
と無関心に炊事場からカレー粉を鍋に入れている。
「料理を作るのを見たのは初めてだ」
「ポールウインナーだけじゃないよ。5時から8時までは夕食兼のお客さんが多いのよ。いつも残っているいのは食べ残し」
「それで警察に引き渡されるの?」
と言いながら出来立てのカレーライスを並べて小瓶を抜く。
「銀行はそんなことはしない。都合退職だろう。でもこれは仕組まれたものだ」
「怖いところだね」
「検査部が庇ってくれなければ辞めるさ」
「ビルの入札が決まったわ。明日弁護士がビルの設備の立ち合いをする。いつまで店が出来るんだろうかしら。あなたには何か記念になるのを考えておくよ。何しろ気持よかったナンバー2だから」
「ナンバー1は?」
「もちろん高校の頃のヘッドよ」







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『夢追い旅』『空白』とダンポール箱から出してきた小説をアップしてきましたが、今回は初めての短編で書き下ろしました。私の転機の記念碑です。

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