ぽろんの女
FC2ブログ
氷雨の降る日にぽろんの女の店に入りました。
同級生
2019/08/24 - Sat - 07:18
 内偵の報告は検査部長に直接送るのでマンションに帰ってからの作業になる。5人の疑わしい部分を書きこんで調査の進捗報告をする。5人は支店長、次長、代理、経理主任、経理担当だ。ほとんどの幹部が関わっているように思える。それほど核心に迫っていないと言える。
「久しぶりね?」
 5日ぶりにドアを開ける。今日は小雨が降っているがそれほど寒くない。傘を壺に入れると細い鋭い目に出会う。
「3日空振りの石田君よ」
 彼は作業服を着ていて焼きそばを食べている。やはりビールの小瓶をがぶ飲みしている。
「こいつはなあ。クラス一番の不良女と付き合っていた。それで喧嘩を吹っかけてやった」
「それはあんたの片思いや?」
 ぽろんに笑われて急に石田はにやけた顔になる。
「ママのアルバム見せてくれって言ったらお預けくっている」
 さっと立ち上がってアルバムを開く。
「長い髪に長いスカート、スケ番のスタイルや。俺は1年の時憧れていた。それで声をかけたら暴走族のヘッドにぼこぼこにされた」
「ただ路地で寝てただけでしょう。大げさなんだから」
 新しい2人連れの客が入ってくる。
「赤いカーネンションは?」
「お世話になった」
「そうか。次は赤いタオルや。俺はそこまでに1年と半かかった。それから結婚を申し込んだが、あっさりと断られた。男性不信なんだってさ」






スポンサーサイト



CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
アルバム
2019/08/23 - Fri - 06:47
「いつも遅いのね?」
 今日は11時を回っている。ぽろんの女は積み上がった皿を洗っている。
「多かったようだね?」
「いつもいつも閑古鳥が鳴いていたら。そうそう」
と言いながらガラスコップにポールウインナーを投げ込む。それからぶつぶつ言いながら戸棚の中からアルバムを出してくる。
「3期生だって言ってたね。クラス憶えてる?」
「3-2だったかなあ」
「じゃあ文系だね。このクラスは昔から不良が多かった。あれあれこれね?」
 10数年ぶりのご対面だ。もうアルバムさえどこにあるのか覚えていない。
「3期のアルバムがあるわけ?」
「お客が持って来てくれる。去年のまで全部揃っている」
「ママのが見たいな?」
「ダメ。もっと親しくなってからね。同じクラスの石田君憶えている?」
と言って写真を見せる。
「一度大ゲンカしたな。彼もここに来る?」
「一時は毎日来てたわ。今は電気工事で各地に出張してる」
 バタンとドアが閉まる音がして、鍵をかける音がする。次の瞬間ピンク色のセーターからぽろんと形の良いおっぱいが飛び出して押し付けられる。
「今日はたくさん出るからまんべんなく吸ってね」
 いつの間にか造花の赤いカーネンションがガラスコップに刺さっている。







CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
カーネーション
2019/08/22 - Thu - 06:50
 3日ぶりにドアを開ける。どうしても彼女が言ったミルクの味は思い出せない。あれは一つのジョークだったのか。今日は氷雨の降らない暖かい夜だ。まだ9時を過ぎた時間だ。
 カウンターに2人が座っている。作業服を着た近くの工場の人?もう一人は背広にネクタイの年配の人。彼女はあの日の記憶がないようにカラオケをセットしている。でも無言でビールの小瓶を抜く。私は落ち着いた雰囲気になって鞄からファイルを出して目を通す。
 7億の金が消えている。これが私が所属していた検査部の結論だった。だが難しい社内体制で強硬な検査を行えない。上席の検査部長は平取りで中間派、この支店は歴代の頭取派の支店長が取り仕切っている。それで課長代理補だった私が人事に移って派遣されることになった。
「今日は焼きそばが残ってるけど食べる?」
 カウンターに千円札が2枚、どうやら作業服の人が出て行ったようだ。それに合わせて音楽に切り替える。
「それでミルクの味忘れてしまったの?」
「記憶に無いなあ」
「でも今日はだめよ」
「彼女はねえ、その気がある時はポールウインナーのガラスコップにカーネーションを挿すんだよ」
「先生はA高校の国語の先生」
「今日はカーネーションがあんな棚の上にある」
「こんな堅物だけどぽろんの常連よ」
 先生が生徒のおっぱいを吸うの思い浮かべて、つい親しさを覚えて話し込んでしまった。





CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 1  *  Edit
ぽろんの女
2019/08/21 - Wed - 06:46
 カウンターの中からぬ~とショートカットの女性の顔が上がってくる。つい後ずさりして、 「もう閉めるならいいですよ」 「ここはお客さんがいたら閉めません。でも今日はポールウインナーしかないけど?」 「好物です。ビールは?」 「小瓶でラッパ飲みを」 「それも慣れています」 「始めて見るね?」 「ええ、東京から来ました。始めてこの駅の近くの店に入ってみようと」  小瓶が出てポールウインナーが無造作にガラスコップに5本もさされる。ママも小瓶を飲んで止めていた音楽を流す。 「カラオケは?」 「いいです。先ほど気が付いたのですが、ここは古本屋があったのですね?」 「よく知ってるね?1階にね」 「ビルじゃなかったかと?」 「このビルは昔からあった。記憶ってあやふやなのよ」 「でも古本屋の黒縁眼鏡の親父さんは覚えてる」 「それは父よ。高校は?」 「A高校だよ」 「じゃあ、何期生?」 「3期生」 「2つ下ね」  何を話したのかいつの間にか氷雨も止んで、窓が薄明るくなっている。上半身に毛布が被されて、サンドイッチとコーヒーが湯気を上げている。 「私のおっぱいのミルクどうだった?」
CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
氷雨
2019/08/20 - Tue - 07:00
 傘を叩く氷雨の中、最終電車でこの駅に降りた。
 昔の実家があった駅だが、もうすっかり風景が変わってしまっている。家族でよく行っていた寿司屋のビルもシャッターが下りたまま。商店街のネオンも消えている。そう言う実家も東京に引っ越してもう10年になる。それがどんな因縁か3か月前に人事部から出向になった。
 それで少し時間はかかるが懐かしくなって実家の近くのマンションを借りた。それなのに毎日残業続きで実家の跡も商店街もまだまともに見ていない。
 今日は体中が重く沈んだ気持ちだ。それで職場の銀行の近くで飲んだがまだ飲みたらない。同僚や上司とは飲むなと指示を受けている。それでいつも一人立飲み屋による。今回の仕事は半年を目途でと言われているが半分過ぎた。まだ先が全く見えない。
 傘をさしたまま古いビルを見上げる。昔もあったような定かではない。ここも入口の店はシャッターが下りていて看板も薄れていて割れたところから黒ずんだ蛍光灯が見える。3階に唯一明かりが灯っている窓がある。その光に吸い寄せられるように傘を閉じてエレベターのボタンを押している。
「もう終わってるだろうな」
と繰り返すががたんと揺れながら上がっていく。
 そう言えばここには昔古本屋があって高校の帰り道寄っていた。黒縁眼鏡をかけた年配の男性が箱のような台に一日中座っていた。エロ雑誌を見ているとはたきを持ってわざとらしくやってくる。
「帰るか」
 エレベターから踏み出して足が止まる。廊下にスタンドが出ている。氷雨が窓ガラスに当たる音が廊下に響いている。
「明日は休もうか」








CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
カレンダー
2019/07 ←  → 2019/09
2019/08
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール

FC2USER272770NPV

Author:FC2USER272770NPV
『夢追い旅』『空白』とダンポール箱から出してきた小説をアップしてきましたが、今回は初めての短編で書き下ろしました。私の転機の記念碑です。

最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR