ぽろんの女
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氷雨の降る日にぽろんの女の店に入りました。
赤いタオル
2019/02/16 - Sat - 06:46
 3日遅れて検査部長から過去5年間の睡眠口座の支店分の報告書が添付ファイルで送られてきた。退職願については何も触れられていない。その代り部長のコメントが付いていた。
「この支店だけ睡眠口座の残高が増えていない。15年に遡って調べると減っているくらいだった」
と異常を知らせている。これは調査した経験だが睡眠口座に1000万を超える残高のものもよくあるのだ。死亡した年配者の場合もあるし、裏口座の場合もある。これを引き出しても騒がれることは少ない。
 今日は次長の調査のついでに報告書に載っていた大口の睡眠口座解約の解約書類を調べてみた。まずすべて現金処理だ。通常現金処理は避けるように指導している。それにサインや押印が微妙に違うように見える。担当は経理主任⇒次長か代理⇒支店長となっている。5人のカウンターの誰の印もない。
「難しそうな顔してるね?」
「ああ」
 声をかけられて顔を上げる。いつの間にか先程までいた作業着の2人は帰っている。目の前のガラスコップにはポールウインナーがまだ2本残ったままだ。腕時計に目をやるが、まだ11時にもなっていない。
「もうクローズするのか?」
 そう言う目の前に幻の赤いタオルが乗っている。
「早すぎるけど、リエの話聞いたらたら堪んなくなったわ。タオルをこの機に及んで投げたら殺すからね」
 初めてぽろんのベットに泊まることとなった。





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睡眠口座
2019/02/15 - Fri - 06:39
「何読んでるの?恋人から?」
 今日は珍らしく早く職場を出た。あの自己都合退職の女性からのメールだ。最近は次長にやたらと面倒な仕事ばかり回されている。
「リエのろけっちゃって」
と陰口をたたきながら、3人連れの相手をしている。離れたところに国語の先生が飽きもせず文庫本を読んでいる。
「・・・私だけ逃げたようで・・・。一つこの銀行で不思議なことがあるのを思い出しました。普通は支店ではローテーションで各部門の調査がされているのですが、ここは睡眠口座だけは経理主任だけが毎年調査しています。私はこれが問題だと一度次長に談判したことがあります。それから何かにつけいじめにあっていました」
 睡眠口座か。10年以上動かない預金で1000円未満が多い。これは最終的に銀行の雑益になる。もう5年ほど前に行員がこの金に手を出した事件があった。それで本店検査部に毎年報告書を送るようになっている。ただどんな報告書か記憶にない。
「面白い視点だ!」
「不倫か?」
 いつの間にか石田が隣に座っていて携帯を覗き込む。
「彼女とは何もなかったよ」
「そんなはずがない」
「俺は運河の前まで窓から見てたぜ。ホテルに入った」
「石田君みっともないよ」
 ぽろんのママに背中を叩かれている。
 今日も赤いカーネイションは戸棚の上にいる。






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不幸を絵に描いた
2019/02/14 - Thu - 05:50
 もう何年振りか女の中に精を吐きだしたら、信じられないほどすっきりした気持ちになった。それから検査部長にこの仕事後退職する旨を書いた。どうもこういう仕事は肌に合わない。
「あの日は泊まって何回したの?」
 3日ぶりだ。どうもぽろんのママはリエから報告を受けているようだ。あの頃の暴走族は仲間内で女を回した。今思えば不思議だがあの時はそれで仲間意識が盛り上がった。私は暴走族っではなかったのでリエが抱かれた後は不機嫌だった。
「ご両親の話聞いたよ。大変だったなあ」
「あの子は子供産んでから口が軽くなったわ」
 父親は弟の保証人になって、多額の負債を作って夫婦で自殺をして、離縁になった彼女が2年前にここに戻ってきたのだ。
「このビルも競売中よ」
「清算して残るのか?」
「借金がね。それで石田君の知り合いの弁護士と相談して相続放棄をしたよ。まあまあ踏んだり蹴ったりの人生ね」
「それならどうするんだ?」
「誰も知らない町にでも行こうかってね。でもまだ踏ん切りがつかないよ。私の両親は不良の私と違って生真面目な一生だった。どうも私の分も使ちゃったみたい」
 それでこのビルは彼女しか住んでない訳だ。
「石田が結婚を申し込んだと言うが?」
「だめ。1回だけやったらその気になって。彼では私は持たないよ」






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包囲網
2019/02/13 - Wed - 06:40
 いよいよ私に対する包囲網が狭まってきた。今回はお客のカウンターのカルトンの金が消えたと。カウンターの従業員の女性は泣きだして直属の上司の私が責任と調査を次長から申し渡された。この1週間応接室に缶詰めになって、本来の調査はできず女性は自己都合退職をし、私には始末書を書くように迫った。こういうことも検査をしているとある話だ。
「本店検査部に調査を依頼してください」
 その一言で支店長がこの事件をうやむやにしてしまった。確かにより強引になってきている。そんな夜石田から来いよメールが入った。
「遅いなあ」
 ドアを開けると石田が3人の女性に囲まれて上機嫌だ。
「10日間敦賀と言ってたのじゃないか?」
「女子会があるので飛んで戻ってきた」
「そんな適当な仕事か?」
 少しむかむかしている。今回の件は次長に嵌められたとしか考えられない。
「でも顔が蒼いよ」
 ぽろんのママが珍しく手の込んだ料理を出す。
「そうむくれないこと。私が頼んで携帯を入れてもらったんだから」
 出された小瓶を一気にラッパ飲みする。
「彼女達昔の暴走族仲間。何か月かに1度集まるの。3人はみんな子持ちよ。私だけがふらふらしてる。一番年長なのにさ。彼は大手の銀行マンよ。東京から転勤して里帰り」
「このねいちゃんたちの顔見て思い出さないか?」
 石田が無理やり女性の一人を私の横に座らせる。






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不幸な女
2019/02/12 - Tue - 07:01
 営業責任者の代理に取引先にパソコンの説明に無理やり連れて行かれた。どうもこの5人は連携しているように見える。この会社は風俗を幅広くしているようで、パソコンを一人で見ていると半裸の若い子が入ってきて無理やり抱きつく。これは隠しカメラに取られると部屋から飛び出した。こういうことは検査にはよくあることだ。どうもこの支店では孤立無援なようだ。
「今日は石田は?」
「10日ほど敦賀に出張だと言っていたわ」
「だからメールが来ない訳だ」
 今日はカウンターに資料を広げてもう一度目を通す。ぽろんの女は昨日の激しかった行為をすっかり忘れたようにふるまう。遂に赤いタオルは出て来なかった。
「何をしているの?」
「不正を調べている」
「嫌な仕事ね」
「ああ、もう今回で辞めようと思っている」
 つい本音が出た。
「あたし親不孝な娘なんの。彼氏の暴走族のヘッドとしばらく東京に駆け落ちしてたの。始めての子供が出来たけど彼に言われて流した。それが5年後足洗う時に事故で死んじゃった。二人とも真面目にやろうとしてたのにね」
 彼女も小瓶をラッパ飲みしている。
「それから5人かな6人かな彼氏が代わったけど顔も覚えていない。最後の彼氏とに子供が出来た。2年前かな。それが生まれてすぐに死んじゃった。やっと母親らしくって思ったのにね。それで彼に離婚された」
 この話はまだ続きそうだったが、新しい3人連れが入ってきて途切れてしまった。






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『夢追い旅』『空白』とダンポール箱から出してきた小説をアップしてきましたが、今回は初めての短編で書き下ろしました。私の転機の記念碑です。

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