ぽろんの女
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氷雨の降る日にぽろんの女の店に入りました。
不幸を絵に描いた
2020/01/11 - Sat - 08:23
 もう何年振りか女の中に精を吐きだしたら、信じられないほどすっきりした気持ちになった。それから検査部長にこの仕事後退職する旨を書いた。どうもこういう仕事は肌に合わない。
「あの日は泊まって何回したの?」
 3日ぶりだ。どうもぽろんのママはリエから報告を受けているようだ。あの頃の暴走族は仲間内で女を回した。今思えば不思議だがあの時はそれで仲間意識が盛り上がった。私は暴走族っではなかったのでリエが抱かれた後は不機嫌だった。
「ご両親の話聞いたよ。大変だったなあ」
「あの子は子供産んでから口が軽くなったわ」
 父親は弟の保証人になって、多額の負債を作って夫婦で自殺をして、離縁になった彼女が2年前にここに戻ってきたのだ。
「このビルも競売中よ」
「清算して残るのか?」
「借金がね。それで石田君の知り合いの弁護士と相談して相続放棄をしたよ。まあまあ踏んだり蹴ったりの人生ね」
「それならどうするんだ?」
「誰も知らない町にでも行こうかってね。でもまだ踏ん切りがつかないよ。私の両親は不良の私と違って生真面目な一生だった。どうも私の分も使ちゃったみたい」
 それでこのビルは彼女しか住んでない訳だ。
「石田が結婚を申し込んだと言うが?」
「だめ。1回だけやったらその気になって。彼では私は持たないよ」






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包囲網
2020/01/06 - Mon - 06:26
 いよいよ私に対する包囲網が狭まってきた。今回はお客のカウンターのカルトンの金が消えたと。カウンターの従業員の女性は泣きだして直属の上司の私が責任と調査を次長から申し渡された。この1週間応接室に缶詰めになって、本来の調査はできず女性は自己都合退職をし、私には始末書を書くように迫った。こういうことも検査をしているとある話だ。
「本店検査部に調査を依頼してください」
 その一言で支店長がこの事件をうやむやにしてしまった。確かにより強引になってきている。そんな夜石田から来いよメールが入った。
「遅いなあ」
 ドアを開けると石田が3人の女性に囲まれて上機嫌だ。
「10日間敦賀と言ってたのじゃないか?」
「女子会があるので飛んで戻ってきた」
「そんな適当な仕事か?」
 少しむかむかしている。今回の件は次長に嵌められたとしか考えられない。
「でも顔が蒼いよ」
 ぽろんのママが珍しく手の込んだ料理を出す。
「そうむくれないこと。私が頼んで携帯を入れてもらったんだから」
 出された小瓶を一気にラッパ飲みする。
「彼女達昔の暴走族仲間。何か月かに1度集まるの。3人はみんな子持ちよ。私だけがふらふらしてる。一番年長なのにさ。彼は大手の銀行マンよ。東京から転勤して里帰り」
「このねいちゃんたちの顔見て思い出さないか?」
 石田が無理やり女性の一人を私の横に座らせる。






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不幸な女
2020/01/05 - Sun - 08:08
 営業責任者の代理に取引先にパソコンの説明に無理やり連れて行かれた。どうもこの5人は連携しているように見える。この会社は風俗を幅広くしているようで、パソコンを一人で見ていると半裸の若い子が入ってきて無理やり抱きつく。これは隠しカメラに取られると部屋から飛び出した。こういうことは検査にはよくあることだ。どうもこの支店では孤立無援なようだ。
「今日は石田は?」
「10日ほど敦賀に出張だと言っていたわ」
「だからメールが来ない訳だ」
 今日はカウンターに資料を広げてもう一度目を通す。ぽろんの女は昨日の激しかった行為をすっかり忘れたようにふるまう。遂に赤いタオルは出て来なかった。
「何をしているの?」
「不正を調べている」
「嫌な仕事ね」
「ああ、もう今回で辞めようと思っている」
 つい本音が出た。
「あたし親不孝な娘なんの。彼氏の暴走族のヘッドとしばらく東京に駆け落ちしてたの。始めての子供が出来たけど彼に言われて流した。それが5年後足洗う時に事故で死んじゃった。二人とも真面目にやろうとしてたのにね」
 彼女も小瓶をラッパ飲みしている。
「それから5人かな6人かな彼氏が代わったけど顔も覚えていない。最後の彼氏とに子供が出来た。2年前かな。それが生まれてすぐに死んじゃった。やっと母親らしくって思ったのにね。それで彼に離婚された」
 この話はまだ続きそうだったが、新しい3人連れが入ってきて途切れてしまった。






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経理主任
2020/01/03 - Fri - 06:48
 石田に携帯を教えたら夕方に何度もメールが入ってくる。
「今日は何時に行く?」
とこればかりだ。
 3日後に、マンションの個人用のパソコンに検査部長からメールが入った。5人の経歴が添付されていて、とくに経理主任の女性についてはコメントが入っている。この中で今の頭取が支店長だったときにいたのは彼女だけだと言っている。そのときすでに彼女はベテランで頭取との噂があったとある。それで今日は一日中彼女の動きを見ていた。どうも40歳半ばでまだ独身のようだ。
「遅いな」
 石田が国語の先生と飲みながら言う。
「月末だからね。たくさん報告ものがあるのさ」
 確かに時計を見ると10時半を回っている。カウンターに掛けるとポールウインナーが赤いカーネーションとともに投げ込まれている。
「悪いが今日は先生と梯子する」
と入れ替わるように出ていく。ぽろんは当然のようにクローズのカードをかけてドアを閉める。
「久しぶりに待ち遠しかったわ。あなたって不良の匂いがする」
 そう言えば銀行に入ってから不良をピタッと封じてしまっている。今日は初めて長ったらしく唇を吸っている。私はどうしてか黒縁眼鏡の経理主任の顔が彼女に似ていると思った。ぽろんの乳房がはち切れそうに膨らんでいて青筋が立っている。






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同級生
2020/01/02 - Thu - 06:42
 内偵の報告は検査部長に直接送るのでマンションに帰ってからの作業になる。5人の疑わしい部分を書きこんで調査の進捗報告をする。5人は支店長、次長、代理、経理主任、経理担当だ。ほとんどの幹部が関わっているように思える。それほど核心に迫っていないと言える。
「久しぶりね?」
 5日ぶりにドアを開ける。今日は小雨が降っているがそれほど寒くない。傘を壺に入れると細い鋭い目に出会う。
「3日空振りの石田君よ」
 彼は作業服を着ていて焼きそばを食べている。やはりビールの小瓶をがぶ飲みしている。
「こいつはなあ。クラス一番の不良女と付き合っていた。それで喧嘩を吹っかけてやった」
「それはあんたの片思いや?」
 ぽろんに笑われて急に石田はにやけた顔になる。
「ママのアルバム見せてくれって言ったらお預けくっている」
 さっと立ち上がってアルバムを開く。
「長い髪に長いスカート、スケ番のスタイルや。俺は1年の時憧れていた。それで声をかけたら暴走族のヘッドにぼこぼこにされた」
「ただ路地で寝てただけでしょう。大げさなんだから」
 新しい2人連れの客が入ってくる。
「赤いカーネンションは?」
「お世話になった」
「そうか。次は赤いタオルや。俺はそこまでに1年と半かかった。それから結婚を申し込んだが、あっさりと断られた。男性不信なんだってさ」






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『夢追い旅』『空白』とダンポール箱から出してきた小説をアップしてきましたが、今回は初めての短編で書き下ろしました。私の転機の記念碑です。

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