ぽろんの女 2019年07月
FC2ブログ
氷雨の降る日にぽろんの女の店に入りました。
不良時代
2019/07/16 - Tue - 07:30
 細く釣り上がった目。彼女は結い上げた髪を解くと、
「少し肥えたけどイメージは残ってるでしょ」
「リエ?」
「そう。学年一番の不良。2年間ツトムの女」
「だけど今は浮気者の肉屋のおかみ。子供が2人」
「そこまでねいさん言わないでよ。初恋の夢が壊れる。ツトムはまだ独身?」
 ぽろんが気を使って小瓶を2本抜いて前に置いて隣で盛り上がっている。
「ああ」
「ツトムは不良の割には勉強できたもんね。私はすねてたからね。喧嘩ばかりしていた。これ憶えている?」
 リエが財布から小さなお守りを出してくる。
「知らないと言われたら悲しいから、私から言う。学校の近くにある神社で二つ買ってくれた」
 私はそのお守りをすっかり忘れてしまっている。でもこの長い髪と細く釣り上がった目は好きだった。
「今でもツトムの勉強部屋の押し入れ憶えてる。おそらく100回はやったね。いつも口にハンカチを銜えさせられていた。あんだけやったのに子供できなかったのに今の主人とは1回きりで出来ちゃった婚」
「その濃厚な話は外でやって」
 ぽろんと石田が笑っている。それで追い出されるようにネオンの消えた商店街に出る。リエが腕を掴んでぐいぐいと路地に入っていく。
「子持ちだろう?」
「今日は泊まる。そうしないとここの運河に飛びこむ」
「相変わらずだな」
 あの頃お金が出来たら泊まっていたラブホテルがまだあった。







スポンサーサイト
CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
自供
2019/07/15 - Mon - 07:00
 夜に検査部長からメールが入っていた。

「現在大株主も入って役員会が開かれている。もちろんここでは君の報告が出されて駆け引きがされている。どこまで責任を問うのかが議論されている。そんなに時間はかからないだろうと思う。君の席は検査部に戻す。退職願は考え直せないか」
とある。もちろんノーと回答した。
 朝刊では早くも経理主任が使い込みを認めたとある。2500万のマンション以外とくに資金使途が見られないとある。単独犯も認めている。だが支店内では密やかに噂が飛び交っている。支店長と次長と代理の3人組は応接に籠りきりだ。今日は本店から昔の同僚の検査部員が3名入ってきている。
 やはり足がぽろんの店に向かう。今日は鞄に中にノートパソコンを入れている。転職先から社内誌に載せる挨拶文の依頼が入ってきている。
「赤いカーネーションも赤タオルもなくなったね?」
「もう使うこともなくなったから旅行鞄に仕舞った」
「向こうで使うのか?」
「どうだか?そうそう先程まで石田君がいたのよ。司法書士の彼女と出来ちゃった婚になりそうだと」
「似合わないカップルだなあ」
「外から分からないことが多いのが男と女よ。今日はフォーを作ったけど食べる?」
 私は冷蔵庫から小瓶を出してきて抜く。
「あの経理主任48歳だったね。あれは男に貢いでいたタイプよ。歳から言うと支店長かな?」
「支店長じゃない。もっと上の人だ。だが明かされることはなさそうだ」







CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
刑事告発
2019/07/14 - Sun - 07:17
 突然の経理主任の逮捕に支店の中は騒然としている。開店したものの捜査官が支店長室に書類や伝票を運び込んでしまっている。引き継ぎに出かけていた支店長が飛んで帰ってきて青い顔で次長の横に座っている。関係者が捜査室になった支店長室に交互に呼ばれる。私も昼から一番長く呼ばれた。

 告発は検査部長名らしい。頭取を通さずどういうルートで告発したのか。質問を受けていて感じたのは頭取の名前は一切出ていない。あくまでも経理主任の単独犯で告発されている。
「とうとう入ったね?」
 ぽろんが国語の先生の新聞を取り上げて見せる。夕刊に女性銀行員7億使い込みと出ている。
「7億も何に使ったのだな。男に貢いだのか?」
 先生がもっともらしい批評をする。新聞にはまだそれは今後の捜査を待つとある。
 この慌ただしい中次長に退職願を出した。検査部長を待っておれない。すでに入社手続きを終えている。出社は本社の営業部と決まった。
「取りあえず本社の営業部に配属が決まった」
「どこにあるの?」
「銀座だ」
「凄いね」
「飲むのは新橋になりそうだよ」
「新橋ってどんな街?」
「大阪で言う京橋みたいなところだ」
 京橋でよく飲んでいる先生が答える。
 検査部長はどんな人脈で今回の刑事告発に至ったのか。前回の臨時取締役会で頭取に押し切られた形だった。それがこんなにも早く反撃している。頭取の派閥の座長の支店長は全く知らされていなかったようだ。でも私の報告がかなり割愛されて使われていることに変わりはない。どうもすっきりとしない。










CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
2019/07/13 - Sat - 07:01
 予定より5日早く転職の会社の役員面接が決まって、病気と称して会社を休んだ。それにぽろんの店のお別れ会も欠席だ。役員会では5名の役員と30分の面接があり、3時間ほど待たされて夜の会食があった。グループ外採用で7人が選ばれた。親会社の社長も同席で銀座の本社ビルの地下のクラブで10時まで飲み会があり、翌朝から3時まで入社手続きと社内見学があった。4月1日入社と決まった。
「悪かったなあ」
 ドアを押すと一人でベトナムの本を読んでいるぽろんに声をかけた。
「で、面接は?」
「ああ、4月1日入社だ。面白そうな会社だ」
「それはよかったね」
「それで肩書は?」
「平だ。みんな平から出発するそうだ」
「そういう私もベトナムでは平のおばさんよ」
「何人くらい来てた?」
「常連が17人。立食パーティで精一杯。開店からこんなに入ったの始めて。リエ達も来ていたわ。彼女残念がってたよ。新品のスケスケパンティはいてきたのに」
「そのほうがいい」
「でも私の予定を破ったら殺すからね!」
 壁のカレンダーに赤〇が入っている。最終日に付き10時で閉店とある。





 
CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
ミルクの味
2019/07/12 - Fri - 06:44
「たまには飲まんかね?」
 内勤の直属の次長が背中から声をかけてくるのを振り払って銀行の通用扉から出る。彼は取締役支店長の使い走りだ。調査をされているのではないかと支店長が疑っている節がある。ようやく36人いる行員のうち?マークは5人まで絞り込んだ。調査で分かったことは頭取が長く支店長をした時期があったと言うことだ。それにこの7億の消失がこの時期から始まっている。
 やはり足はぽろんの店に向いている。今夜はまだ9時にもなっていない。ドアを開けるとこの辺りに住んでいる大学生がカウンターに6人並んでいて、あの国語の先生が一人文庫本を読んでいる。ぽろんの女はビールの小瓶とポールウインナーを先生の横に置く。
「卒業生だってね?3期までは自由な学校だったらしいね。今は落ちこぼればかりだ。でも私にはちょうどいいかな」
 2本目が開けられて並ぶ。ママの胸に目をやって生暖かい甘酸っぱいミルクを思い出す。
「銀行員だってね?」
「ええ、どうも私には合ってないようです」
「なかなか自分に合う仕事は難しいね」
 今日はカーネーションは棚の上にあって降りてきそうにない。その視線を先生に見られたようだ。
「ミルクの味は当分断ち切れないな。でも誰にでもと言うわけでもないようだ。ちょっと初恋した頃のように足がついつい向く」
 話が聞えたのかぽろんの女が楽しそうに笑っている。
「ああしていると30歳には見えないな」
「先生はこれでまだ若いのよ。40歳にも行ってない独身。でもバツイチ。顔に似ず不良よ」











 
CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
ナンバー2
2019/07/11 - Thu - 07:23
 今回の臨時役員会は頭取の強い意向で行われたようだ。発令を受けたものは今月末までに引き継ぎを行う。私は新しい検査部長に今の報告を送る気はない。ここ数日早く帰っては報告書をまとめる。今なら転勤前の検査部長に渡せる。同時に退職願いを支店に提出しよう。新しい職場が決まらなかったらそれはその時だ。メールと文章で報告書を送る。どこかすっきりした気分だ。
「ご無沙汰ね」
「報告書き上げてたからね」
「いよいよ辞めるの?私より先に旅立ちね」
「今日もベトナム料理かい?」
「行くまでに大体の料理を作れないとね。それにこのビルの立退きの日も近づいてきて来ている」
 3人連れの常連がカラオケを歌っている。
「それとまたリエがしたいってよ。連絡しようかしら」
「いやもういい。もう昔の二人じゃない。彼女はいいお母さんだよ」
「冷たいね。でもいい判断と思う」
 ぽろんは小瓶を抜いて乾杯する。
「最後の日はすっぽかさないでね。二人の記念を収めていく」
「ナンバー2の男としてな」
 彼女の中には今でも初恋のヘッドが生きている。
「生きている人ではナンバー1よ。ベトナムに行くまでに会えてよかった」
「あの日氷雨が降っていなかったらきっとこの店を見つけることはなかった。人生って不思議だなと思う」
「高校時代は顔を合わすこともなかったのにね」







CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
人生の交差点
2019/07/10 - Wed - 06:19
 支店室に呼ばれた。支店長は上機嫌でコーヒーを喫茶店から運ばせる。
「これはまだ発表されてないので黙っていてくれ。私は本店の検査部長に移る。次長が支店長に代理が次長になる」
「検査部長は?」
「彼は札幌の支店長だ。左遷だな」
「どうだ君を代理に推薦するが?」
 どうも検査部長は派閥に押しつぶされたようだ。もう未練もない。
「いい匂いだな」
 ドアを押すと石田と司法書士が並んで座ってワインを飲んでいる。彼にはワインは似合わないと思いながら定位置に掛ける。
「ベトナム料理の春巻きよ」
とぽろんが皿に盛った春巻きと小瓶を抜く。この前の夜、ぽろんと暴走族のヘッドとの絡みをビデオを見せられて妙に燃え上がった。次は記念に撮ってベトナムに行くと言われている。ぽろんのベットの横にはすでに旅行鞄が出来ていて、部屋は閑散としている。今が人生の交差点と言うものなのか。
「やはり不良仲間は来なかったな」
 同窓会に参加したそういう石田も不良仲間なのだが。
「亮介が今度市会議員で出るそうだ」
 そう言えば司法書士は彼と付き合っていたはずだが、知らん顔をしている。
「ママは同窓会出たことある?」
「一度もない。あそこには何も思い出はないわ」
「同じだな」








CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
春が来る?
2019/07/09 - Tue - 07:00
 本店で臨時役員会が開かれた。見つけた仮払いを消した口座以外は2日前に検査部長にメールで調査報告書を送った。それに対してコメントが返ってきていた。
「ひょっとしたら私は検査部長を外れるかもしれない。それでもこちらに報告をするように」
 それと転職先の人事課長から封書で東京での役員面接の予定の通知があった。それで休暇届を出した。
 電車を降りると雨が降った来た。そのままの軒沿いにエレベターを登る。廊下でいつか会った弁護士とすれ違う。
「立退きの進展があった?」
「ええ、立ち退き料が大方了承された。桜まで待てないね。何とかベトナムに行ける費用は出そう。そちらは?」
 鞄から会社のネームの入った封書を出して見せる。
「役員会が東京である。その反応を見てマンションの解約通知を出すよ」
「同期では出世頭なんでしょう?」
「いやあそこにいたら体まで腐ってくる」
 今日は料理を作る気はないようで、いつの間にかポールウインナーと小瓶が2人で6本も並ぶ。
「最近石田見ないな?」
「あれから同窓の司法書士と付き合っているみたい」
「似合わないカップルだな。この前先生に赤タオル投げたんだろ?」
「妬ける?でもそれでもっと欲求不満になちゃたわ。今日は早く閉めるね」






CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
解決の糸口
2019/07/08 - Mon - 06:37
 出社命令が下りた。誰も今回のことは話したがらない。どこかびくびくしているところがある。彼らのうち何人が不正に気付いているのだろうか。私の部下のパワハラを訴えた女性が退職している。さすがに次長も新しい仕事を言いつけない。それで金庫の中で気になっていた睡眠口座の復活の事例を調べた。
 すでに1年前に睡眠口座として解約処理されたものだ。金額は2千万余り、個人名義で架空口座臭い。本人が来ず社長と名乗る人間が来たので一度は断ったようだが、後日運転免許を持った社員と社長が来た。処理は経理主任がしている。支払いは仮払い処理している。その後すぐに仮払いは消されている。消された日付の2千万の支払いのあった伝票を2時間かけて発見をした。
 今日は珍しく1階の古本屋のシャッターが上がっていて光が漏れている。
「ママは?」
「古本を売りさばいたようだよ」
 文庫本に目を落としたまま定位置の国語の先生が答える。ほとんど同時にマスクに軍手をしたぽろんが上がってくる。
「いつまでも形見だと言ってれないものね。謹慎は解けたの?シチューがあるけど食べる?」
「最近いろいろ作るようになったな?」
「ほれ料理の本を下から持って上がって積んである」
 先生が笑う。どうやらベトナムへ進んでいるようだ。続けて小声で囁く。
「3か月ぶりの昨日は赤タオルだよ」
「ところで東京には彼女がいるの?」
「ああ、いたが別れた。銀行を辞めると言ったら疎遠になった。彼女は平凡なサラリーマン生活に憧れたいるのさ」
「未練はない?」
「彼女とは泥酔状態の出会いだから」









CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
面接
2019/07/07 - Sun - 06:58
 謹慎は続いている。その間に転職会社の大阪面接があった。若い会社で同年代の人事課長と面談をした。凄くフレンドリーな面接で、大阪でパスしたら東京の本社での役員面接ですと言っていた。私は今の検査ではなくファイナンスの営業を希望した。
 謹慎中はノートパソコンを鞄に入れて持ち歩いている。喫茶店に入ってコーヒを飲みながら2時間今までの調査結果を整理している。そこに検査部長からのメールが入ってきた。
「あのビデオで人事部はパワハラなしと判断した。それとあの5人のうち支店長は当時の次長で経理主任は経理を担当してた。頭取の部下だった。次長も代理も当時の営業担当だった。いわば腹心中の腹心だ。常務取締役支店長は派閥の座長を務めている。だが頭取の基盤は必ずしも安定していない」
とコメントが入っていた。
 今日は石田からいつもの来いよメールが入った。
 ドアを押すと石田が黒縁眼鏡をかけた女性と座っている。
「覚えてないか?」
「いや」
 ママは今日も今朝まで続いた激しい行為を忘れたような顔で見ている。
「クラスの委員長だった?」
「この町で司法書士をしています。同窓会をしてるのだけど参加してくれません?」
「あの頃の不良仲間は誰も参加してないんだ」
「それほど思い出もないしね」
 そう言えばホームルームでリエとの淫らな行為を彼女に詰められた。私の顔を見てぽろんがにやりと笑った。






CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 1  *  Edit
閉店
2019/07/06 - Sat - 06:41
 部屋中を掃除して大ごみを出す。昼から京橋に出て賃貸物件の契約を済ませる。田町の海鮮居酒屋の上の少し古いワンルームに決めた。朝刊と週刊誌を買って遅めの昼食の寿司屋に持ち込んで見る。新聞では単独犯として検察に送られるとあり、睡眠口座の調査が今後の課題と書かれている。
 興味本位の週刊誌はそれでは済まさない。もうシリーズが始まっていて彼女が入行して現在の至る経緯を書いている。当時経理担当者だった頃の今では想像できない彼女の写真が載っている。その後黒縁眼鏡をかけるようになった。その頃が頭取が支店長として赴任していた時期だ。その頃の同僚だった主婦が証言している。
「私は女の勘で支店長と不倫していたと思いました」
と用務員の話を裏付けるような話をしている。その頃支店長は取締役に昇進し、彼女はマンションを買って経理主任になっている。支店長は5年の長期を務め本店の常務取締役業務部長に栄転している。これは私の調査でしっかり覚えている。
 なぜ経理主任は罪を一人で背負ったのか。証言があるが使い込みの行方が不明と書かれている。銀行ってこんなにもチェック機能が甘いのか。そんなことはないと呟いて京阪電車に乗り込む。ホームからぽろんのビルの背中が見える。2日前の獣のようなセックスを思い出す。ぽろんはそれをビデオに収めながらプレイをしていた。さすがにしばらくは抱けそうにない。
 駅を降りると取り壊しの資材が運び込まれている。エレベータも止まっていて、
「長らくお世話になりました。本日をもって閉店としました。カーネーション」
 この時初めてぽろんの店がカーネーションと言うことを知った。
 非常階段を上がって3階にはいる。廊下に看板もなくなっている。さらに5階のベットルームの前に立つ。ガラス窓をそっと押してみるとそこにはやはり鍵があった。いつもそうして彼女は開けていたのだ。すでにベトナムへ立ったのか。
 床の真ん中に旅行鞄だけがある。私は鞄からボールペンを出してメモを書く。
「ベトナムへ行く前に会いたい」






CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : - *  COMMENT : 0  *  Edit
空洞
2019/07/05 - Fri - 06:38
 3日後次長から呼び出しを受けて、支店長室に来るように告げられた。自己都合で辞めた元従業員と連絡がついて、経理の担当は今の支店長の不倫相手だと知らされた。やはり不正に係っているのは私の目を付けた5人だろう。だが頭取との繋がりが分からない。それについては検査部長にそれぞれの経歴を調べてもらうように頼んでいるが回答はない。
「異議申し立ては?」
「ビデオテープです」
「了解しました。私は1時検査部調査役でもあったのですよ。今年3月末で定年退職です。最後の仕事になりますね」
 話はそれだけで後は被害者と次長と経理主任の入念な面接をして最終便で帰って行った。私はその間支店長室で軟禁された格好だ。
 11時半やはりぽろんのドアを押した。恋してると言うのではなく寂しい者同士の温かみがあるのだろう。リエとはこすり合えば安心できた。その後何人かと付き合ったが肉体的な興味はどんどん薄れて行った。ぽろんとはお互いの空洞に何かを埋める作業をしているようだ。
「どう?」
 ぽろんもパワハラを気にしてくれていたようだ。きょうも小瓶とポールウインナーだ。
「何とかなりそうだ」
「乾杯ね」
 今日は赤いカーネンションなしの赤いタオルが投げ込まれた。もうクローズのカードが掛けられ鍵のかかる音がする。
「3本は空けてから部屋に行こう。あなたは久しぶりに肌が合うわ」





CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
パワハラ
2019/07/03 - Wed - 06:52
 予期すべく事件は起こった。8時過ぎに金庫の中での作業を終了した時、上半身裸の経理担当の女の子が背中から抱きついてきて金切り声で叫んだ。待ってましたと言うように次長と経理主任が駆けつけた。それで彼女の供述のみ本店人事部に報告された。と言うことで支店長から自宅謹慎を申し渡された。
 これについても検査部長に報告のメールを入れた。検査部長からメールが返ってきて、人事部の調査役がそちらに行くことになったので事前に今回の調査を話したので事実を伝えるようにと言うことだった。頭取の派閥がどれほどの大きさなのか分からない。
 初めて開店時間の5時にドアを押した。
「風邪ひき?」
「パワハラで自宅謹慎だ」
「そんなわけないでしょ?」
と無関心に炊事場からカレー粉を鍋に入れている。
「料理を作るのを見たのは初めてだ」
「ポールウインナーだけじゃないよ。5時から8時までは夕食兼のお客さんが多いのよ。いつも残っているいのは食べ残し」
「それで警察に引き渡されるの?」
と言いながら出来立てのカレーライスを並べて小瓶を抜く。
「銀行はそんなことはしない。都合退職だろう。でもこれは仕組まれたものだ」
「怖いところだね」
「検査部が庇ってくれなければ辞めるさ」
「ビルの入札が決まったわ。明日弁護士がビルの設備の立ち合いをする。いつまで店が出来るんだろうかしら。あなたには何か記念になるのを考えておくよ。何しろ気持よかったナンバー2だから」
「ナンバー1は?」
「もちろん高校の頃のヘッドよ」







CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
転職
2019/07/02 - Tue - 06:55
「検査部が倉庫を調べたようだね?」
 次長から厭味ったらしく言われた。どうも検査部にも頭取派がいるようだ。やはり詳しいデターを送るのは様子を見てからだ。金庫の現金有り高が合わない。これは故意に作った誤差だ。今日は支店長を含めた幹部が会議と称して夜早く店を出た。今日も引き続き経理の女性と金庫に8時まで入った。なぜか女性の目が異様だった。
 最近は本気で私のベトナムを探し始めている。それである会社の採用募集に応募した。
「晩御飯食べる?カレーだけどね」
「ああ貰う」
 常連の商店主が打ち合わせの流れで5人カウンターを独占している。私は定位置に掛けて鞄から封筒を出して募集要項をを見る。ベンチャー企業の金融子会社だ。まだ2期生の募集だが、始めから明確に上場を掲げている。
「応募したのね?」
「こちらのベトナムの探さないとな」
「ベトナムかあ」
「これ見てみる」
 国際郵便を出してくる。スナップ写真がが3枚入っていて、1枚は子供を挟んだ夫婦でどうもベトナム人と現地結婚したようだ。
「彼女は高校を出てすぐに海外渡航した。この店は5年前に出店した。今は調子がいいみたい。これは店の中」
「結構広いね」
「これは私の部屋よ。今の私の部屋より大きいよ」
「これなら泊めてもらえそうだな」
「宿泊費取るよ」









CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
約束
2019/07/01 - Mon - 06:14
「よく出来ている。完璧な調査だ。もうしばらく辞表は出さないでくれ」
 検査部長の短いメールと本店の調査が添付されていた。これは頭取が支店長で在籍していた頃の私が見つけた架空口座の写しだ。この時に7億のうちの5億が消えている。伝票の写しは経理主任と支店長の印しかない。どうも初めは二人でスタートしたようだ。
 今朝から支店長が本店に検査部長の引継ぎに出かけた。かなり急いでいるようだ。もう陰では次長のことを代理が支店長と呼んでいる。それに女性社員から退職した経理の女性が東京に引っ越しするという噂が流れている。支店長がワンルームマンションを買ったとも言う。もう私の知ったことじゃない。どことなく私は除け者にされている。
 ビルの前に立つと大きな看板がシャッターのところに貼ってある。4月1日から解体工事が始まるようだ。
「何が建つ?」
「ワンルームマンションらしい。1階はコンビニだそうよ。辞表出したの?」
 ぽろんには不正の話もしている。
「いや、検査部長から待ってくれと言われている」
「でもその人も札幌に都落ちでしょう?」
「だがいい思いはなかったけど、信用できる人物ではあったな。最後の奉公だよ」
「石田君がお別れ会をしてくれるんだって。会費制で20日だけど来れる?」
 彼が作った張り紙を見せる。
「まあ間違いなく」
「それより3日後くらいの夜空けててね」
「そのDVD売りに出さない約束なら」
「私も恥ずかしいのよ」








CATEGORY : 小説  *  THREAD TITLE : ライトノベル  *  THREAD THEME : 小説・文学
TRACKBACK : 0  *  COMMENT : 0  *  Edit
カレンダー
2019/06 ←  → 2019/08
2019/07
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
プロフィール

FC2USER272770NPV

Author:FC2USER272770NPV
『夢追い旅』『空白』とダンポール箱から出してきた小説をアップしてきましたが、今回は初めての短編で書き下ろしました。私の転機の記念碑です。

最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR